一般社団法人広島市医師会臨床検査センター

Hiroshima City Medical Association Clinical laboratory

臨床検査センターインフォメーション
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新規実施項目のお知らせ

平素は格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
このたび、新たに下記の項目が受託可能となりましたのでご案内いたします。
ご利用いただきますよう、お願い申し上げます。

 

 

■実施日 平成29年 9月 5日(火) ご依頼分より

■新規実施項目

詳細については下記をご覧ください。

 

膵グルカゴン

グルカゴンは膵α細胞から分泌され、肝臓に作用し血中のグリコーゲン放出を促進する作用があります。糖尿病では食後のグルカゴン濃度上昇(分泌抑制できない)があるとされ、食後高血糖にはインスリン分泌不全とグルカゴン過剰分泌が関与しているという報告があります。

本検査は、血中に存在するグルカゴンと同様のアミノ酸配列をもつグルカゴン様ペプチドを測りこむことがないため、従来のRIAに比べてグルカゴンを特異的に測定することができます。糖尿病の病態把握や治療薬の選択に有用な検査として期待されています。

 

プレセプシン

敗血症(細菌性)の診断補助に有用な、新しい敗血症マーカーです。

プレセプシンは、白血球やマクロファージの細胞表面受容体であるCD14のN末端断片であり、分子量約13kDaの低分子タンパク質です。顆粒球等が細菌を貪食する過程で細胞内に取り込まれたCD14がプロテアーゼによって分解されることで生成し、血中に放出されると考えられています。

プレセプシンは、敗血症患者において早期から高値を示し、重症度を反映して推移するマーカーであることが報告されています。また、従来の敗血症マーカーであるプロカルシトニンや炎症性マーカーCRPに比べ、外傷・熱傷・外科手術など非感染性の炎症を示す病態の影響を受けにくいという特徴があります。一方で、慢性腎不全患者、特に血液透析患者では高値を示す傾向があります。

本項目は、敗血症または敗血症を疑う患者を対象とし、血清または血漿中におけるプレセプシンの定量値をご報告いたします。より感染症に特異的な敗血症マーカーとしてご活用ください。

疾患との関連

敗血症(細菌性)

▼関連する主な検査項目

プロカルシトニン、C反応性蛋白(CRP)定量

 

ヒト精巣上体タンパク4(HE4)

卵巣悪性腫瘍の診断補助に有用な、特異度の高い新規腫瘍マーカーです。

ヒト精巣上体タンパク4(HE4)は、分子量約25kDaの分泌型糖タンパク質であり、精巣上体遠位の上皮細胞で発見されたことからこの名が付けられました。男女の生殖組織や呼吸器上皮を含む正常細胞での発現が報告されているほか、卵巣悪性腫瘍患者の血清中に高濃度で検出されること、婦人科良性疾患(子宮内膜症等)では値の上昇が少ないことが知られています。

卵巣悪性腫瘍は、卵巣が腹腔内臓器であることから症状を自覚しにくく、発見時には予後不良であることも多いため、女性生殖器悪性腫瘍の中で最も死亡数の多い疾患です。一方で、卵巣にできる腫瘍の約85%は良性であることから、術前に悪性か否かのリスクを判定することが求められています。

本項目は、卵巣腫瘍を認めた患者を対象に、卵巣悪性腫瘍の診断補助等を目的に行う検査です。卵巣悪性腫瘍におけるHE4値は良性腫瘍と比較して有意に高値を示すことから、両者の鑑別に有用と考えられています。本検査試薬の感度は52.8%、特異度は100%であり、CA125に比べ感度は劣るものの高い特異度を示します。HE4とCA125は相関性が低いため、両検査を組み合わせることで上皮性卵巣悪性腫瘍の診断精度が向上する可能性があります。

卵巣悪性腫瘍の診断補助に、特異度の高い腫瘍マーカーとしてご活用ください。

 

疾患との関連

卵巣悪性腫瘍

▼関連する主な検査項目

CA125

 

百日咳抗体 IgA、百日咳抗体 IgM

単一血清での診断補助検査として、百日咳の早期診断に貢献します。

百日咳は、主に百日咳菌の気道感染による急性呼吸器感染症であり、ワクチン接種前や未完了の乳幼児が発症した場合、重症化する傾向があります。2000年以降はワクチン効果が減弱した成人患者の報告数が増加し、乳幼児に対する感染源となっていることから、成人を含めた早期診断・治療開始が重要と考えられています。

百日咳の検査は、培養と百日咳抗体 IgGに加え、2016年11月より遺伝子検査が保険適用となっています。百日咳抗体 IgAとIgMが加わることで、早期診断への検査体制がさらに充実することとなりました。

百日咳抗体 IgAは、百日咳毒素(PT)および繊維状赤血球凝集素(FHA)の総IgA抗体価を測定し、百日咳抗体 IgMは、百日咳菌に対するIgM抗体価を測定いたします。IgA抗体は病日約21日、IgM抗体は病日約15日をピークに発現し、IgA抗体はIgM抗体よりも持続して検出されることが確認されています。IgAおよびIgM抗体はワクチンの影響を受けないため、これまで急性期と回復期のペア血清を必要とした抗体検査において、単一血清での診断率向上が期待されています。

疾患との関連

百日咳

▼関連する主な検査項目

百日咳抗体〔EIA〕(PT-IgG, FHA-IgG),百日咳菌DNA

 

▼判定基準 百日咳抗体 IgA, 百日咳抗体 IgM

※2~4週間後に採血した血清による再検査をお勧めします。

 

便中カルプロテクチン

潰瘍性大腸炎の活動性評価に有用な新規マーカーです

カルプロテクチンは、主に好中球の細胞質に含まれる分子量36kDaのカルシウム・亜鉛結合タンパク質です。潰瘍性大腸炎では、活動期の腸管に浸潤した好中球から分泌され、便とともに体外に排出されることから、腸管の炎症度を反映するマーカーとして知られています。

潰瘍性大腸炎は、クローン病とともに炎症性腸疾患と総称される慢性の炎症性疾患であり、国の難病に指定されています。根本的治療法が確立されておらず、再燃と寛解を繰り返すことから長期にわたる医学管理が必要とされ、定期的な内視鏡検査が行われています。しかし、内視鏡検査は侵襲性が高く患者の負担が大きいことから、より簡便な検体検査が求められていました。

ELISA法による便中カルプロテクチンは、潰瘍性大腸炎の患者に対する病態把握の補助を目的とした検査として、2017年6月に保険適用となりました。臨床性能試験では、Disease Activity Index(DAI)内視鏡スコア1以下を内視鏡的寛解とし、本検査のカットオフ値を240μg/gとした場合の診断性能として、感度96.7%及び特異度64.9%、陽性的中率69.0%及び陰性的中率96.0%、判定一致率79.1%の結果が得られています。

非侵襲的に潰瘍性大腸炎の活動性を評価する検査としてご活用ください。

 

疾患との関連

潰瘍性大腸炎

▼関連する主な検査項目

PGE-MUM